質問の第一は、財政運営についてであります。
今後の財政運営についてお伺いいたします。
我が国の景気は、輸出を中心に弱さが続いているものの、緩やかに回復しておりますが、先行きについては、通商問題をめぐる緊張の増大が世界経済に与える影響や、金融資本市場の変動の影響などに留意する必要があるとされており、とりわけ、輸出型産業が集積している本県の県税収入への影響が心配されます。また、この十月から消費税及び地方消費税の税率が一〇%へ引き上げられます。これに伴い、さまざまな税制改正、制度改正が予定されており、本県の歳入、歳出への影響は、来年度以降、本格化してくるものと考えております。
総務省では、先月末の国の概算要求時に、令和二年度地方財政収支の仮試算を公表いたしました。この試算によりますと、来年度は、地方税等については地方消費税の税率引き上げ等を反映して〇・八兆円の増を見込み、また、地方交付税は〇・六兆円の増、地方一般財源総額は一・三兆円の大幅な増加となっています。これは幼児教育の無償化など、人づくり革命に伴う歳出増や社会保障費の自然増を織り込み、一般財源を増額して、自治体財政にしわ寄せを与えないよう配慮しているものと考えられます。
しかし、一方で、骨太の方針二〇一八で定められた地方歳出の目安は二〇一八年度と実質同水準とされており、今後の国の予算編成において、果たして十分な財源がしっかりと確保されるのか、慎重に見ていく必要があります。こうした中、今後も本県の成長を加速させるプロジェクトを強力に推進しつつ、活気ある温かな地域づくりを実現していくためには、こうした制度改正の影響を的確に把握し、時には国へ意見しつつ、安定的な財政運営の確保に努めていく必要があると考えます。
そこでお尋ねいたします。
地方財政に関する大きな制度改正の影響が見込まれる中で、今後の財政運営にどのように取り組んでいかれるのか、知事の御所見をお伺いいたします。
質問の第二は、支え合う地域づくりについてであります。
まず、就職氷河期世代の活躍支援についてお伺いいたします。就職氷河期世代と呼ばれる現在三十代半ばから四十代半ばの一九九〇年代前半、バブル経済崩壊後の雇用環境が厳しい時期に就職期を迎え、就職活動を行った方々は、希望する職につけず、今日においても不本意ながら、非正規雇用などの不安定な仕事についている、あるいは無業の状態にあり、中には、社会参加への機会や自信をなくし、ひきこもり状態になってしまわれた方もおられます。このままでは将来、高齢の生活困窮者の増加や、社会保障費の膨張などの問題が加速化し、深刻化することが大いに懸念されます。こうした中、政府は本年六月二十一日に閣議決定した経済財政運営と改革の基本方針二〇一九、いわゆる骨太の方針において、就職氷河期世代支援プログラムを盛り込み、本格的な対応に乗り出したところであります。
このプログラムでは、全国におよそ百万人いると言われる就職氷河期世代の非正規雇用労働者や無就業者等を対象に、処遇の改善や社会参加を促す取り組みを推進することにより、今後三年間で三十万人の正規雇用化を図ることを目標としております。また、二〇二〇年度予算の概算要求においては、ハローワークにおける相談窓口の設置や、専門担当者による就職相談から職場定着までの一貫した伴走型支援、ひきこもりや生活困窮者など社会的に孤立しやすい方に積極的に手を差し伸べるアウトリーチ支援が盛り込まれるなど、厚生労働省を中心に、具体的な取り組みの検討が進められております。少子・高齢化の進行により生産年齢人口が減少し、人材不足が深刻化する中で、就職氷河期世代の方々に対して、人生の再チャレンジに向けた支援をしっかりと行い、活躍の場を設けていくことは、この世代の方々の生活を安定させることはもちろんのこと、地域の活力を高めていく上でも大変重要であると思います。本県は製造業を中心として我が国を代表する産業の集積地であり、強い産業競争力を背景とした良質な雇用環境に恵まれた地域であります。こうした本県の強みを生かし、就職氷河期世代の課題解決に向けて全国をリードしていくことも、この愛知の大きな役割であると考えております。
そこでお尋ねいたします。
就職氷河期世代の活躍支援について、県としてこの課題をどのように捉え、また、どのように対応していかれるのか、知事の御所見をお伺いいたします。
次に、幼児教育、保育の無償化についてお伺いいたします。
いよいよ本年十月、来月から、いよいよ幼児教育、保育の無償化が始まります。幼稚園、保育所、認定こども園等を利用する三歳から五歳までの全ての子供たちの利用料、ゼロ歳から二歳までの子供たちについては、住民税非課税世帯を対象に利用料が無償化されます。
また、認可外保育施設や一時預かり事業、病児保育事業やファミリー・サポート・センター事業など、多様な保育施設、サービスについても一定額が無償化されます。
これにより、子育て世帯の経済的負担が大幅に軽減され、少子化の一因である子育てに係る経済的不安の解消が進むものと大いに期待しております。一方、無償化を機に潜在的な保育ニーズが喚起され、保育所への入所希望児が急増すれば、待機児童の解消が遠のくとともに、保育士不足がより深刻化する懸念もあります。さらに、認可保育所への入所を希望しても入ることができず、認可外保育施設を利用する子供たちが少なからずいることから、国の基準を満たさない認可外保育施設であっても、五年間の経過措置として、無償化の対象に認められました。このため、こうした施設を利用する子供たちの安全や保育の質をいかに確保するかが課題となっています。また、無償化の実務を担う市町村からは、かねてより準備期間が足りないとの声が上がっており、本年五月の子ども・子育て支援法改正以降、順次、国から無償化の実務的な手続に関する通知が示されました。市町村では、これらの通知を受けて、保護者や保育所等への説明や条例改正など、無償化に向けた準備をわずか数カ月間で終えることが求められており、県としてもこうした市町村の取り組みをしっかりと支援していく必要があります。無償化の円滑かつ着実な実施に向けて、これらの課題に対し、県としてぜひとも適切な対応をお願いしたいと考えております。
そこでお尋ねいたします。
幼児教育、保育の無償化が始まろうとしている今、市町村の準備は万全なのか、そして、待機児童対策を初めとした課題に対しては、県は今後どのような取り組みを進めていかれるのか、知事の御所見をお伺いいたします。
次に、子育てにおける切れ目のない支援についてお伺いいたします。最近の社会環境として、少子化、核家族化の進展や、地域のつながりが希薄になっていると指摘されております。こうした状況のもと、女性は妊娠や出産という人生の大きな節目となる出来事を迎えることとなり、身近なところで赤ちゃんに接する機会を得ることなく親になることで、育児の基本的ノウハウが不足し、子育てにつまずくリスクが高まりがちです。また、大家族であった時代には、妊娠や出産に関する不安の相談相手として、また、困ったときに助けてもらう人として、里帰り分娩に代表されるように、妊産婦は実家を頼るということが当たり前のこととして考えられてきました。しかし、近年は、頼るべき親がまだ現役として就労していたり、出産年齢の上昇による親の高齢化など、実家を頼りにくい状況が生まれており、さらに、個人の生活が重視されるようになったことで、御近所が助け合い、地域全体で子供を育てるという意識が弱くなっているとも聞きます。このように、身近な支援者がいない状況においては、妊産婦の育児不安や孤立感、負担感が一層強くなり、産後鬱のおそれも高まります。
こうした中で、子供の健やかな成長のためには、母親が安心して育児に取り組めるよう、妊産婦や子供のいる家庭に対し、丁寧に寄り添った支援が求められていると考えます。
県では、福祉医療施策の羅針盤となるあいち健康福祉ビジョン二〇二〇において、子育て家庭への支援の充実を課題の一つに掲げ、地域の子育て支援を充実し、妊娠期から子育て期にわたる切れ目ない支援を行うとしています。一方、国においては、妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援を提供するために、保健師等の母子保健にかかわる専門職を配置し、妊娠、出産、育児に関する相談に応じ、必要な情報提供や助言、支援プランの策定等を行う子育て世代包括支援センターの二〇二〇年度末までの全国展開を目指しており、市町村において順次設置が進められている状況にあります。
そこでお尋ねいたします。
妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援のために、県としてどのように取り組んでいかれるのか、知事の御所見をお伺いいたします。
質問の第三は、魅力ある地域づくりについてであります。
まず、SDGsの普及啓発についてお伺いいたします。SDGsとは、サステーナブル・ディベロップメント・ゴールズの略称であり、二〇一五年九月の国連サミットにおいて採択された持続可能な開発のための二〇三〇アジェンダに定められた国際社会全体の持続可能な開発目標のことであります。このSDGsでは、十七のゴールと百六十九のターゲットが掲げられるとともに、地球上の誰一人として取り残さないことを理念とし、先進国、途上国を問わず国際社会全体で、経済、社会、環境にかかわる諸課題の解決に統合的に取り組もうという考え方です。国では、SDGsの理念に沿った基本的・総合的取り組みを推進しようとする都市、地域の中から、特に経済、社会、環境の三側面における新しい価値創出を通して持続可能な開発を実現するポテンシャルが高い都市、地域をSDGs未来都市として選定、支援しており、愛知県は本年七月にSDGs未来都市に選定されたところであります。
本県において世界共通の目標であるSDGsを達成するためには、県民一人一人がSDGsを認識し、SDGsのための行動を実践していくことが必要不可欠です。しかしながら、大手広告代理店が本年四月に発表した全国の十歳代から七十歳代の男女計約六千六百名を対象としたSDGsに関する生活者調査によると、SDGsの認知度は約一六%であり、本県においても普及啓発に力を入れていくことが急務であると考えます。また、二〇三〇年に向けて持続可能な社会をつくっていくためには、次代を担う子供たちにもSDGsへの理解を深めてもらうことが重要であります。一方、SDGsの普及啓発に当たっては、同じく、SDGs未来都市に選定された名古屋市、豊橋市、豊田市を初めとした県内の市町村や、企業、大学、NPO等のSDGsに取り組む団体とも連携、協力して進めていくことが大切であると考えます。
そこでお尋ねいたします。
SDGs未来都市としての選定を受け、SDGsの達成に向けて、県民への普及啓発や県内の市町村等との連携にどのように取り組んでいかれるのか、知事の御所見をお伺いいたします。
次に、中小企業の事業承継支援についてお伺いいたします。
経営者の高齢化が進み、団塊世代の経営者の大量引退時期が到来する中、後継者難に伴う廃業の増加によって、企業が有する貴重な技術やノウハウ、雇用の喪失に加え、サプライチェーンへの影響などが懸念されており、中小企業の事業承継は喫緊の課題となっています。
中小企業庁の推計では、二〇二五年度までに平均引退年齢の七十歳を超える中小企業、小規模事業者の経営者は約二百四十五万人とされ、うち約半数の百二十七万人が後継者未定であるとし、現状を放置すると二〇二五年までの累計で約六百五十万人の雇用、約二十二兆円のGDPが失われる可能性があると試算しています。また、各地域の中小企業は、単に経済活動の主体であるにとどまらず、地域のにぎわいや活力創出の担い手としても重要な存在であるため、中小企業の減少は地域の活力が損なわれることにもなります。まさに事業承継問題の解決は、地域経済及び地域社会の持続的発展を左右するものと言えます。
こうしたことから、国は今後十年間程度を事業承継の集中実施期間と位置づけ、各都道府県に商工会、商工会議所、金融機関等の身近な支援機関で構成する事業承継ネットワークを構築して、早期、計画的な事業承継に関する経営者の気づきを促すための事業承継診断の実施、診断で掘り起こされた経営者の悩みや課題等に対して、事業承継コーディネーターや中小企業診断士などの専門家による支援を行うことにより、円滑な事業承継を推進することとしています。本県においても、平成二十九年十月に公益財団法人あいち産業振興機構とともにあいち事業承継ネットワークを立ち上げ、以降、支援機関の協力を得て、事業承継診断を当初の目標を超えて実施するなど、事業承継問題に対する取り組みが積極的に行われております。また、昨年度からは専任のコーディネーターをブロックごとに配置して、きめ細かな相談体制を整備し、経営者向けあるいは支援機関向けのセミナーを開催するほか、士業専門家と連携した個社支援にも取り組んでおり、今後、さらに支援事業の展開が期待されます。
そこでお尋ねいたします。
県はこれまでの事業承継支援を踏まえ、今後、支援を展開するに当たり、どのようなことを重視し、取り組んでいかれるのか、知事の御所見をお伺いいたします。
次に、あいちトリエンナーレ二〇一九についてお伺いいたします。
情の時代をテーマに掲げて開催しております国際芸術祭、あいちトリエンナーレ二〇一九は、八月一日の開幕後、二カ月近くが経過しましたが、前回を上回るペースで多くの来場者にお越しいただいていると伺っております。一方で、企画展の表現の不自由展・その後がテロ予告や抗議が殺到したことなどにより、開幕わずか三日で中止となったことにつきましては、皆様方に安全・安心に楽しんでごらんいただくべき芸術祭として、まことに残念でなりません。二〇一〇年の初回以降、本県の文化芸術振興のリーディングプロジェクトとして、心豊かな県民生活と活力ある愛知の実現のための一翼を担ってきたあいちトリエンナーレでありますが、四回目となる今回、展示内容や行政のかかわり方など、さまざまな意見が寄せられる状況となっています。あいちトリエンナーレを本県のみならず、我が国を代表する国際芸術祭として継続していくためには、十分な検証を行っていただくとともに、何が必要なのかを県民の皆様に示すことが重要であると考えます。
県は先月設置した第三者委員会であるあいちトリエンナーレのあり方検証委員会からの提言や、九月二十一日開催の国内フォーラムで出された意見などを踏まえて、今後の対応を決めていくと伺っています。
そこでお尋ねいたします。
あいちトリエンナーレ二〇一九について、閉幕までの残り半月余りをどのように進めていかれるのか、知事の御所見をお伺いいたします。
質問の第四は、安心な地域づくりについてであります。
まず、地域強靱化計画についてお伺いいたしますが、先月末の九州北部地方を襲った大雨や、今月の台風十五号など、各地で大きな災害が発生しています。被災された方々にお悔やみとお見舞いを申し上げますとともに、一日も早い復旧・復興を願うところであります。今回の台風では、大規模停電や断水が発生し、公共交通機関においても大きな影響を受けるなど、改めて地域強靱化の重要性を認識したところであります。特に昨年は、大阪府北部地震、西日本豪雨災害、台風第二十一号、北海道胆振東部地震など、全国各地で大きな災害が発生し、多くの人命と財産が失われたほか、関西国際空港の閉鎖や北海道全域の電力供給が停止したブラックアウトなど、これまで経験したことのない事態が生じ、防災・減災、国土強靱化は一層重要性を増し、喫緊の課題となっています。このため、国は電力や空港、鉄道など、暮らしと経済活動を支える重要インフラが災害時にその機能を維持することができるよう、昨年十月に全国で緊急点検を実施し、十二月には、その点検結果等を踏まえ国土強靱化基本計画を見直し、エネルギーのリスク分散や気候変動の影響を踏まえた治水対策などの施策を追加することで、中長期的な視点から強靱化の取り組みを深化させています。また、短期的な取り組みについても、緊急点検結果に基づき、重要インフラを対象として、防災・減災、国土強靱化のための三か年緊急対策を取りまとめ、直ちに実施に移すことで取り組みの加速を図っています。県においても、二〇一五年八月に地震、津波を対象として愛知県地域強靱化計画を策定するとともに、翌年三月には風水害などのリスクを加えて拡充を図り、さまざまな対策を進めてきておりますが、昨年末からは国の基本計画の見直しを踏まえた作業を進めていると伺っております。一方、全国の地域強靱化計画の策定状況を見てみますと、都道府県レベルでは、四十七全ての都道府県で策定を完了しているものの、市区町村レベルでは、策定済みまたは策定中の自治体が本年九月一日現在、全国千七百四十一市区町村中二百七十三市区町村で約一五%にとどまっており、本県でも、策定済みは名古屋市、豊橋市、豊川市、田原市の四市、策定中は設楽町の一町と、全国同様、余り進んでいない状況にあります。県土全体の強靱化を図っていくには、県はもとより、県内全ての市町村が同じ方向性で取り組みを進めていくことが重要であり、そのためには県による積極的な支援のもと、各市町村における地域強靱化計画の策定を促進していくことが必要と考えます。
そこでお尋ねいたします。
このような状況を踏まえ、県として地域強靱化計画をどのように見直していかれるのか、また、市町村の地域強靱化計画策定をどのように支援していかれるのか、知事の御所見をお伺いいたします。
次に、民間ブロック塀等の対策についてお伺いいたします。
昨年六月に発生した大阪府北部地震では、ブロック塀や組積造の塀の倒壊により、通学途中の児童を含む二名のとうとい人命が失われました。その記憶が残る中、ちょうど一年後の本年六月十八日に山形県沖を震源とするマグニチュード六・七、新潟県村上市で震度六強、山形県鶴岡市で震度六弱を記録する地震が発生し、ブロック塀等の倒壊が報告されました。幸いにも被害に遭われた方はいませんでしたが、危険なブロック塀等の安全対策の重要性を改めて認識した次第であります。
こうした中、本県では、大阪府北部地震での被害を踏まえ、県が管理する施設や学校において、ブロック塀等の除却などの対策が進められております。一方、民間のブロック塀等については、名古屋市を初めとする特定行政庁六市を除く四十八市町村において、各市町村が設定した重点対策区域を対象に、県、市町村、建築関係団体が協力し、ブロック塀等の安全パトロールが実施されております。昨年九月に公表されたパトロール結果によれば、四千八百カ所のブロック塀等の点検を行い、基準に不適合なブロック塀等が三千二百七十五カ所、率にして実に約七割あるとのことです。これらのブロック塀等の所有者に対して注意喚起をするとともに、自己点検の実施や是正を促したとのことでありますが、重点対策区域以外にも基準に不適合な危険なブロック塀等は数多く存在しており、幅広く安全対策を促進する取り組みが望まれるところであります。また、ブロック塀等の自己点検の結果、不適合な箇所があった場合に除却や改修工事を促すためには、まずは資金面等への支援が重要なことであると考えられます。そのような状況のもと、県は今年度、市町村が指定する路線等に面する危険なブロック塀等の除却や改修工事費に対する補助制度を創設いたしました。この制度の活用により、特定行政庁六市を含む市町村のブロック塀等の安全対策がより一層進むことを期待しているところであります。
そこでお尋ねいたします。
本県では、民間のブロック塀等に対して安全パトロールの実施や補助制度の創設など、これまでさまざまな安全対策が行われておりますが、これらの取り組みがどのような状況であるのか、また、今後どのように取り組んでいかれるのか、知事の御所見をお伺いいたします。
次に、交通安全対策についてお伺いいたします。
テレビや新聞等で連日報道されておりますように、先月、茨城県内の常磐自動車道において、あおり運転の末に車を停止させ、運転者の男性を殴るなどした男と、それに関与した女が逮捕されました。公開された被害車両のドライブレコーダーの映像を見ますと、高速道路を蛇行したり幅寄せして、無理やり停止させ、恫喝している様子や、車からおりてきて、本線上を歩き、被害者を殴打している様子などが鮮明に映っております。後方からほかの車両が突入するなどの最悪の事態には至らなかったものの、目を疑うような悪質かつ危険きわまりない行為であり、私はその理不尽さに激しい憤りを覚えました。あおり運転は、平成二十九年六月に神奈川県内の東名高速道路で一家四人が乗車した車が本線上で停止させられ、その直後に後続車に突入されて夫婦二人がお亡くなりになるという痛ましい事故が発生したことを契機として、大きくクローズアップされました。それ以降も全国であおり運転の発生がたびたび報道されており、あれだけ大きな犠牲が出てしまったにもかかわらず、いまだこうした悪質、危険な運転をする人が後を絶たないことは残念でなりません。こうしたことを背景に、最近では、自衛策としてドライブレコーダーを購入される方が急増していると聞きます。つまり善良なドライバーは、みずからが交通事故の当事者にならないよう注意するだけでは足りず、あおり運転の被害に遭うかもしれないという不安とも常に闘っているわけであります。また、あおり運転の被害者の遺族が厳罰化等の法整備を訴えていることや、先月末には警察庁がその検討を始めたとの報道もありますが、こうした行為に対する抑止力を高めていくためには、厳罰化の必要性は極めて高いと私も感じています。いずれにいたしましても、善良なドライバーが交通事故に気をつけながら気持ちよく運転することができるよう、可能な対策を早急かつ最大限に講じていく必要があると考えます。
そこでお尋ねいたします。
全国的にあおり運転が社会問題となる中、こうした行為の抑止に向け、どのように取り組んでおられるのか、警察本部長の御所見をお伺いいたします。
質問の第五は、活力ある地域づくりについてであります。
まず、子供、若者の自立・活躍支援についてお伺いいたします。
本年五月に川崎市で発生したひきこもり傾向にあった五十代の男による無差別児童殺傷事件、六月に東京都練馬区で起きた元農林水産事務次官によるひきこもり傾向にあった四十代長男の殺害事件、これら立て続けに発生した大変悲惨な事件はいまだ記憶に新しく、いずれの事件も早期に適切な支援が受けられていれば、防ぐことができたのではないかと考えます。また、本年三月に豊田市で小学校六年生の女児二人が、七月には岐阜市で中学校三年生の男子生徒が、それぞれいじめを原因としてマンションから飛びおり自殺するなど、この地域でも子供の大変痛ましい事件が後を絶たず、こうした報道を見るたびに、私たち大人がもっと早く子供たちの悩みに気づいてあげられなかったのかと残念でなりません。子供、若者を取り巻く社会情勢が大きく変化する昨今、子供、若者をめぐる課題は、ひきこもりやいじめ、自殺のほかにも、貧困、虐待、不登校、SNS被害など多岐にわたり、大変憂慮すべき状況となっております。こうした課題に対応するためには、困難を抱える子供、若者の心に寄り添いながら、自立に向けた地域における重層的で切れ目のない支援が必要であり、そのための支援体制を早急に整備することが重要であります。一方で、未来を担う子供、若者が健やかに成長し、夢や希望を持って活躍できる社会を実現するためには、子供、若者の社会性や自主性を培いながら、社会全体で応援していくことが必要と考えます。
県では昨年、あいち子ども・若者育成計画二〇二二を策定し、子供、若者の活躍を新たな視点として盛り込み、全ての子供、若者が持てる能力を発揮し、活躍できる社会づくりに取り組んでいると伺っております。
そこでお尋ねいたします。
困難な状況を抱える子供、若者の自立に向けた支援体制の整備について、どのように取り組んでいかれるのか。また、夢や希望を持った子供、若者の活躍を後押しするため、どのような取り組みを実施していかれるのか、知事の御所見をお伺いいたします。
次に、魅力ある県立高等学校づくりについてお伺いいたします。
まず、県立高等学校教育推進実施計画についてお尋ねいたします。
近年、グローバル化や情報化などにより社会が急速に変化し、子供たちの進路選択に対するニーズが多様化しており、学校教育においてもこのような時代の変化やニーズを的確に捉えて、学校づくりを進めていく必要があります。こうした中、教育委員会は平成二十七年三月に策定した県立高等学校教育推進基本計画(高等学校将来ビジョン)を踏まえた第一期の県立高等学校教育推進実施計画を策定し、これにより、愛知総合工科高校や、昼間と夜間の二部制単位制定時制高校として城北つばさ高校の新設、小牧工業高校の航空産業科などの学科改編等、さまざまな取り組みが進められてきました。
私たち公明党愛知県議員団で城北つばさ高校を訪問した際には、アルバイトの単位認定など特色ある制度を背景に、自分のペースで真剣に学習を進めており、学校から、中学のときに不登校で成績の振るわなかった生徒が一日も休まず登校し、試験でも高得点をとっているという話を聞くことができました。現在、開校三年目を迎え、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなど外部人材の活用も進み、学校教育の一層の充実に尽力されていると聞いています。また、愛知総合工科高校にも訪問しました。最新の施設、設備と最先端の教育を行う、まさに本県工業高校の核となる学校でありました。
専攻科については、我が国初の公設民営化を導入した学校であり、高度な知識や実践的な技術、技能を身につけた人材を育成しており、生徒が充実した設備で力を伸ばして、現場で活躍したいと実習に臨む姿を見て、大変頼もしく思いました。
いずれの学校も、時代の変化や子供たちのニーズに対応した特色ある教育活動を展開しておりますが、近年、少子・高齢化による社会構造の変化に伴い、今まで予想してこなかった新たな課題も指摘されており、学校教育もこれらに迅速に対応していく必要があります。
そこでお尋ねいたします。
第一期県立高等学校教育推進実施計画は本年度で計画期間が終了しますが、この五年間の取り組みをどのように評価し、今後、魅力ある高等学校づくりをどのように進めていかれるのか、教育長の御所見をお伺いいたします。
最後に、貧困の連鎖の解消についてお伺いいたします。
魅力ある県立高等学校づくりが進められる一方で、県内には人間関係をうまく築くことができない、授業についていけないなどの理由で高等学校を中退した方や、中学校卒業時に将来の夢を描けずに進学や就職ができなかった方、日本語にふなれで、就学や就職に困難を抱えている外国籍の若者などが数多くいます。こうした若者は将来の展望を描くことが困難になっており、とりわけ、高校卒業資格を得られていないことは、就職やキャリアアップに不利となり、将来的な貧困を招く大きな要因になると考えられます。貧困問題の根本的な解決に向けては、将来を担う子供たちがその置かれている境遇にかかわらず、一人一人の能力、適性などに応じた教育を受けて、生きる力を身につけ、社会的、経済的に自立を果たしていくことが必要です。教育委員会では、高等学校を中退した方や、中学校卒業後の進路を決められなかった方、日本語にふなれな外国人の方などを対象とした、若者・外国人未来応援事業を平成二十九年度から実施しており、この事業は子供の貧困対策の具体的な取り組みの工程を示す子どもが輝く未来へのロードマップにおいて重点事業に位置づけられ、学習支援と相談、助言により、キャリアアップを支援するものと伺っています。
そこでお尋ねいたします。
将来的に貧困の連鎖を生じさせないために重要であると考えられるこうした取り組みを今後どのように展開していかれるのか、教育長の御所見をお伺いいたします。
以上、公明党愛知県議員団を代表いたしまして、県政各般にわたるさまざまな課題について質問してまいりました。知事初め理事者各位の明快な答弁を期待いたしまして、質問を終わります。御清聴ありがとうございました。